桜から君が降ってきた。



「こ、この桜は、樹齢400年を超えると云われていて、学校の設立当時から変わらない様子で在るらしいの…、」


珍しくたどたどしい説明だったけど、僕は気にせず大桜を見上げたまま聞いていた。



「ちなみに、この桜はこの学校の生徒の『木登りの登竜門』とも云われていて…」


「木登り!?」


思わず食らいついた僕に、かすみちゃんは少し驚いたように目を丸くして、説明を続けた。


「ええ、そう。太くて頑丈な枝が、幹の比較的低い位置から枝分かれしているでしょ。だから足掛かりにもし易くて、一年生でも頑張れば登れるの。」


「そっか、だから『登竜門』なんだ。」



僕は、深く納得してうんうんと頷いた。




「登ろうぜー!!」

ひとりの男子のかけ声を聞いて、お調子者の男子たち数人が「いえ~い!!」と歓声をあげながら次々と登り始めた。



よーし、僕も!!




とは、ならない。



いや、なれない。





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