☆ハイローハート
「ものすごい音したよね」

「っつか、普通はドアが開きかけたら避けねえ?」

「うん、まるで目の前にいたみたいに……ぶつか……」

「ドア、ちょっとしか開かなかったよな」

めちゃくちゃちょっとしか開かなかった
ドアの真ん前に立っていないと、あそこまで直撃しないんじゃ……ないの??

「みさき、顔見た?」

「見てない」

「前にインターホン鳴らしたヤツかもな」

「でも、このマンションオートロックやん」

「んなの、誰かと一緒に入ればわけねーし」


考え込むように黙ってしまうと、「ほーら、やっぱ俺がいる方がいいだろ?」と得意気に理一が言う

……それと、これとは、別


「鍵しめてりゃ大丈夫だって」

「……うん」

「何かあったら電話してこいっつっただろ?
すぐ来てやるから」

……彼女がおる男には電話はせん
それがアタシのルールなの

「あ、そうだ、あぶね、忘れるとこだった」

理一がポケットからしわくちゃの小さな包みを取り出してアタシの手にのせた

「みさきにおみやげ、WOWOW見せてくれるお礼」

「おみやげ?」

警戒しながら取り出すと、今日遊園地でであったマスコット“ピンクうさぎ”のキーホルダー

「……カワイ♪」

「いつも玄関に置いてるお前の鍵にさ、ぶさいくな魚のキーホルダーついてるのが気になってたんだよ」

「ありがとう」

アタシは早速魚のキーホルダーをとりはずしてピンクうさぎをつける

新品のキーホルダーは硬くて、爪が折れそうになりながらつけていると、理一の手がのびてきてあっという間に鍵を通してくれた

「……ありがとう」

もう一度そう言って見上げると、理一との距離はわずか数十センチ
驚いたアタシは思わず一歩下がり、玄関の段差に引っかかって尻餅をついた


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