☆ハイローハート
MJ
「……で、なんやろ……こ……あこ?」

「え?あ、ごめん、何?」

「だから、この後、彼氏の打ち上げに一緒に行くんやろ?」

「あ、うん」

……彼氏のバンドの出番が終わると、次にあのロシアンブルーの髪の色をした男の子が出てきた
女の子の歓声が半端ない
背の高い華奢な体で、彼が微笑むと、まるでホットロイヤルミルクティーを飲んでるかのように甘い雰囲気が漂った

ギターの腕前は、普通

……思ったほどでもなかったかな
ついつい美化しちゃってたかも

なんてふと視線をそらした瞬間、ライブハウスに響き渡った彼の声
地面がパカっと開いて、落ちたと思った場所は、真っ白な部屋
全てを塗りつくして、そして、新しい色に塗り替えていくような……

それはありきたりなラブソングだったんだけれど、ロシアンブルーの声はアタシの女のどこかを激しく刺激した

インドア派っぽい日焼けしていない体
うっすらと汗ばんでいるのか、髪のはりつく首元

歌の合間にいたずらっぽくファンに笑いかける表情

「……って、もう……やねん、……る?あこ?」

モロが気分ぶち壊しの関西弁を話しているのがうっとーしくて、横でシャットダウンした

ん、目が合った?
いや、合ってない
勘違い、勘違い
何かに落ちると、アタシに都合いい解釈フィルターにかけられるから、うん……
あー、なんだ
んー

すると、歌いながらあの出会った日のようにユラユラと手を振ってきた

……やっぱり、目が合ってる?

女の子達が「キャー!!」と手を振り返しているから、やっぱり勘違いか

耳に残るロシアンブルーの声は、あとを引く
いい声……



「あの歌ってるロン毛、知り合い?
さっきからめっちゃ手振ってんで
あれ、あこに振ってると思うねんけど……
ん?アタシか?」


余韻をモロの関西弁に引き裂かれて横をにらみつけると、舞台に向かって彼女が手を振り返している


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