☆ハイローハート
アタシも前に目をやると、モロに手を振り返されたロシアンブルーのバイバイする手が(違う違う)の動きに変わる

「違う違う……って
やっぱりあこやって
手、振ってあげたら?」

アタシは、やっぱりあの日のように周囲に彼氏がいないか確認して、ちょっとだけ手をあげるとすぐおろした

彼がそれを見て肩を震わせて笑った時、二曲目がはじまった
ロシアンブルーはバンドメンバーと目を合わせてギターをかきならす


……やっぱり、ギターの腕前は、まあまあ


なのに、この声は……媚薬



ロシアンブルーの出番が終わって、やっとモロの相手をしてやろうと横を見るとめちゃくちゃニヤついている

「あんなロン毛がタイプなん?
目がハートやったで……」

「別に、ロン毛が好きなわけじゃないよ」

「めっちゃうっとり聴き入ってたやん?」

「だって、すごくいい声だったでしょ」

「うん、……そーやっけ?」


結構大多数の女の子がロシアンブルーのライブが終わると、表に出て行った
いわゆる、出待ちってやつだと思う

「気付いた時には落ちている、それが恋である」

モロが思い出したようにそう言った
そういや、何かの雑誌にそんなことが書かれてあったっけ

「気付いた時には手遅れ、なんてことにならんようにな」

妙に切実な声色でモロが言うから、背後にあったカウンターに腕をついた
オレンジの照明に照らされたモロの整った顔は、感情を上手に隠す
柔らかい栗色の髪がライトのせいで今日はオレンジに見える

「手遅れな恋でもした?」

「うーん」

モロは煮え切らない返事
なんとなく、予想はつくんだけど

「理一、相変わらずモロの家にWOWOW見に行ってんの?」

「いや、さやかと付き合いだしてからは家に入れてない」

「え?付き合いだした?」


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