☆ハイローハート
午前の授業中、今朝渡された白い封筒を思い出して開封した

中にも白い便箋が入っていて、キレイな字が整列している

『国坂といいます
突然で驚かれたと思いますが
よく朝の通学路であなたを見かけます

いつも友達と楽しそうに笑っている顔が印象的です
髪型も、制服も、とてもあなたに似合っています

あなたと知り合いになれればと思って、これを書いています
次あなたを見かけたら声をかけます
もし迷惑ならその時に遠慮なく

国坂』


何度も何度も読み直す
整った文面
淡々とした内容

朝のドライな態度といい……
なんか、好印象

ナンパっぽくないのが、いい

アタシは再び便箋を封筒のなかに戻すと、机の奥にしまいこんだ

カタンッ……

(ん?)とがさごそ探ると、何かが指先にあたって……
取り出すと、見たことのないシャーペン

あれ、これ誰のだっけ?
とくるくるまわしてみると、「MJ」と記名されている

M J ?

あ、MJ!!
今朝、MJに関して何か忘れてることがあるような気がしたのって、これだ!
……と思い当たって勢いよくあこを見た

教科書の影に隠れてちょうど飴を口に入れた瞬間だったあこが驚いて怪訝な顔を返してくる
シャーペンを見せて口をぱくぱくするも、全く意図は伝わらなくて……

アタシの横に座っている女の子がこちらを不思議そうに見ながらニコッと笑っている

「花谷さんにそれ、渡すの?」

その子は小声で聞いてきてくれた
……親切な人だ
なんて思いながら「あ……」といいかけると、現代国語の先生がチョークを置く音がして言葉を止めた

「それじゃあ教科書の31ページを……真木さん、読んで」

お~、良かったあてられなくて……
と安堵したのもつかの間、アタシのとなりの女の子がキュッと眉をあげて(アチャー)って感じで立ち上がる

あこを見ると、今度はやたら真面目にノートを取っている

もう、次の休み時間でいっか……
と、アタシはシャーペンを机の上に置いた



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