☆ハイローハート
「MJのシャーペンねえ」

洋食屋さんのハンバーグ弁当を食べ終えたあこがシャーペンをくるくるまわしている

すっかりアタシ達のお気に入りの場所と化した運動場の片隅
校舎の影

「ただの偶然でしょ」

「でも、あえてのMとJの書かれたシャーペンがアタシのところに置かれてるなんてさ」

「う~ん……」

あこはあの雑誌の占いをはなから疑ってかかっている
……確かに信憑性にかけるというか、変な占いなんだけど

「まあ、ラッキーアルファベットなんだし、持ってたらいいことあるかも知れないんじゃない」

あこはアタシにシャーペンを渡すとさほど興味なさそう

「ノリ悪……」

「無駄なことに頭も労力も使わないだけ
低燃費なの」

わかるようなわからんような……

だけど、あこ相手にこの話題を広げても冷たくあしらわれるので、アタシはそのシャーペンを自分のポケットに入れた

いい天気で、ブレザーは暑いから脱いだ
あこにいたっては、ブラウスを腕まくりして、シルバーのブレスレット型腕時計が見えている

「今日は学校終わってから何かあるの?」

携帯を見ながらあこに聞かれて「何もない」と即答

「モロさー、モテるくせに暇人だよね」

「彼氏おらんしな、ハハッ」

「遊んで帰る~?」

「んー、うろついてから帰ろっか」


あこはきっと放課後の予定を彼氏にメールしているに違いない

ライブの時に出会ったあこの彼氏は今風で、そんなに束縛する男にも見えなかったんだけど……
人は見かけによらないってのはもう常識なのに、それでも相手の印象というのは第一印象で決まってしまうってのも常識で


アタシが考え事をしているのに、立ち上がったあこが真横でスカートを払うから土ぼこりがもわっとアタシを包み込んだ

「あ、わざとじゃないから」

と、あこが笑ってる

「そう言う時点でわざとやろー!!」

脱いで下に置いていたブレザーを立ち上がるや否やあこに向かってバサバサすると、土混じりの風であこの髪が舞い上がった


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