☆ハイローハート
みぎひだりとよく動く女の頭頂部を見つめる

アタシの太ももに手際よくガーゼをはっつけて手で押さえながら少しだけ目線をあげた


「包帯はどうする?」

「ガーゼだけでいい」


そう答えると、紙テープでガーゼを固定して、学校指定ジャージのズボンを手渡された


さっさと履いてじゅうたんにペタンと座る


「もうええで」


今もまだ後ろ向いてる男三人の背中に声をかけると、恐る恐る振り返ってアタシ達の表情を確認している


一人の男は猫を肩に乗っけて、こちらをじーっと見ていてアタシは気まずさから頭をガシガシかくと勢いよく鼻から息を吐き出した

場の空気を屁とも思ってないもう一匹の猫は、包帯をバッシバッシ叩いて己の権勢を誇っている

アタシは座ってるし、男達は背が高いし、見上げていると首が痛い



「あこ……何、この女」


寝癖なんだか無造作ってやつなんだか、襟足が長く伸びている茶髪の男がやっと口を開いた


「怪我してたから、拾った」


あこと呼ばれた女がアタシの顔を見ながら言う

……拾ったって!!

その物言いにびっくり


茶髪男が「お前の父ちゃんと兄ちゃんもすぐ猫拾って連れて帰ってくるけど、お前も同じ血筋だね」と言いながら近くの椅子に座った


肩に猫を乗せた男も体のバランスを保ちながらじゅうたんにあぐらで座り、アタシと目の高さが同じになる


残るもう一人は制服のズボンにチャラチャラとつけたくさりを鳴らしながらアタシの近くにしゃがみこんでアタシの顔をじーーっと見つめはじめる



「……何見てんねん」



アタシの小声に男達がすごい勢いで顔をこちらに向けると、ベッドに腰掛けた女がくすくす笑いながらちょっと得意気に髪を耳にかけた

ブローされた毛先が彼女の鎖骨あたりにまとまって落ちる



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