☆ハイローハート
「あなたに引き寄せられたのね」

カードを取ると、アタシの前にちらつかせる

「MJ、占いするんやって??」

彼女の前にしゃがみこんで机に腕とあごを乗せると、抑揚のない声が返ってくる

「顔に似合わない方言を使うのね」

「関西人やねん、で、どーなんMJ」

延びてきた前髪がうっとーしくて、顔を傾ける

「それより、MJって言わないでくれない?
間山寿里(まやまじゅり)のイニシャルよ」

アタシが目をパチパチしながら返答を待っているのがわかったのか、黒髪を黒染めしたかのように真っ黒な髪を耳にかけて「占って欲しいの?」と聞いてきた

「欲しい!!」

尻尾を振る勢いで身を乗り出すと「千円です」と手の平を差し出された

「お金とるのー??」

立ったまま話を聞いていたあこが驚いて大声を出すと、周りの生徒がビクッとなる

「もちろんよ、私の能力と時間を使って占ってさしあげるんですから、報酬としていただかないと」

あこがあからさまに眉間にしわを寄せて、しゃがんでいるアタシの腕をつかんだ

「いこ、モロ」

同じ黒髪でも、あこはナチュラルな黒髪で、光の加減によってはブラウンにも見えたりするけど……なんて今関係のないことをふと思いながら、MJの黒髪を再度みやる

「ペン二本とタロットカード持ってきたってんから、そのお礼してや」
「モロ、やめときな、同級生から金とるなんておかしいって、何を理由に金せびられるかわかんないよ」

あこのセリフに、MJはポーカーフェイスを一瞬崩した

だけど、またすぐにこけしに戻る

「いいわ、お礼として占ってあげる
放課後でいい??」

あこが立ち止まって振り返ると、MJが赤い唇でニコリと作り笑いをした


「やっぱり、あなたたちは“猟奇的な二人組み”だと思うわ」


……また、そんなあこを刺激するような事を

場を取り繕うように「じゃ、放課後ね!」とアタシはきわめて明るい声でそう言って、あこと教室を出た



< 112 / 756 >

この作品をシェア

pagetop