☆ハイローハート
見事な手さばきでタロットを混ぜ合わせている

待っていると、トイレから出てきた男がこちらを興味深げに見ながら通り過ぎて行った

彼は友達の待つ席に戻ると、声を潜めているつもりなのか、全く潜められていない声がこちらにまで聞こえてくる


「おい、めっちゃカワイイS女の女がいるッ」
「マジかよー」
「え?何人?」
「三人」
「おれもトイレ行く振りして見て来る」


直後にわざとらしく男が通過していって、あこが顔を背けている

トイレに行ったとは思えない速さでトイレから出てくると、早足で戻っていった


「かわいいかわいい」
「うっそ、おれも見たい」
「っつか、お前声かけてこいよー」
「まず顔見てからだろッ」


……すんごく丸聞こえよ?

アタシはしきりの上から覗くようにゆっくり中腰になった
向こう側からも覗いてきそうな気がして慌てて座る

「はい、この束を三つにわけて」

MJが差し出してきたタロットに手をのばしかけた時、しきりの向こう側から「あれ?」と声がした

つられてそちらを見ると目から上だけがこちらを覗いていて、直後にその顔を現した

「ナル?」

あこが言った途端、理一ととよきの顔も現れる

「みっさき~♪」

ナルが相変わらず学ランの前全開でこっちにやってきた

理一やとよきも自分のカバンを持って移動してくる

「かわいいS女ってみさきとあこの事かよー」

と言いながら、理一は隣のテーブルに座った


「何何、お前ら知り合いなの?」

なんて男達がわらわらと近くに座って……ナルは唐突にタロットの一番上をめくると

「はじめまして、みさきとあこのお友達??」

とMJに話しかけた


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