☆ハイローハート
迷い猫
「今日デートじゃなかったら、ちょっと話ある」

アタシは駐輪場から自転車を取り出しながら肩と耳に携帯電話を挟みこんで電話口の相手にそう告げた

天気は今月のアタシのラッキーウェザー、晴れ


理一は中学生の頃からそうだった
女には優しいんだけど、釣った魚には餌をやらないというか……
自分の彼女の前ではドライな一面をふと見せたりして、彼女を不安にさせるんだ
「つきあうとめちゃくちゃ大事にしてくれそー」
その評価は間違ってはいない
確かに、大事にはしてくれる
なのに、ナルとさくっと合コンに繰り出したり、アタシの家で遊んだり、他の女にも丁寧に対応したりする

この間MJはさやかの事を「八方美人の人気者」と言った

でもアタシからすればさやかには下心があるからまだわかりやすい

理一の「八方美人」は、“え?そうゆうつもりじゃなかったんだけど”と相手を傷つけるパターンが多い

VIP待遇・特別扱いが大好きな「女」という生き物にとって、理一は厄介な男なんだ


エレベーターに乗ると、携帯がメールを受信する

彼氏からの「今日会えない?」というお誘いだったけれど……

――ごめん、今日はもう家なんだ

と返信した


この間のライブから……
ううん、もうちょっと前からか……

彼氏の束縛が、かわいいものから少しキツイものに変わった気がする

それは、彼氏側の変化なのか、アタシの感情の変化なのか


ふっとロシアンブルーが脳裏を駆け抜けた

猫のように奔放そうで、犬のように人懐っこそうで
下手なギターで油断させて、歌声でオトす


詐欺みたいな男


その詐欺が心地いいってどうよ、アタシ

今まで「好き」って言われたら自分も「好き」なような気がして付き合うことが多かったけど

「好き」ノットイコール「嫌いじゃない」


顔?
顔がタイプなの?

ロシアンブルーがアタシの中に棲みついたことにアタシは戸惑っていた

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