☆ハイローハート
「変な男いないな
……あれからは変なことねーの?」

「うん、大丈夫」


……理一のこうゆうとこ、反則


アタシは理一がドアを押さえている手をくぐってエレベーターを降りた

視線を下げたから、手に持っているミスドの大きな箱が目に入る

「あ、理一、良かったらミス……」

そこまで言ってハッと口をつぐむ

理一もまばたきを数回してエレベーターを止めたまま、妙な沈黙がうまれてしまった

「一人で食えねーんだろ
一緒に食う?」

「うん」


……意志、よわ、アタシ

理一がエレベーターから降りたのが嬉しくて、理性と感情がうらはらで、笑えない

アタシより前を歩きながら「ポンデリングとシュガーレイズドがなかったら怒る」と言う理一の背中を見ていた


「あるよ、ポンデリングもシュガーレイズドも、フレンチクルーラーとエンゼルクリームも」

「いいね
じゃ、砂糖抜きのコーヒーだな」

「うん」


アタシが理一を追い越して鍵をあけると、理一はアタシの後ろから入ってきて鍵をしめた


「俺を家に入れたな」


と後ろから小さく聞こえてきて、ビクッと振り返ると「男を入れるとどーなるかわからせてやるー」と首をしめるマネをされて、理一の指がアタシの髪の内側に忍び込んで首に触れた


「ヒー、ひとごろしィ」

とうそ臭い叫び声をあげると、彼は「お前、誰かが聞いたら通報するだろーが!!」と声を潜めてアタシの首から手を離す

サッサとクロックスを脱いで部屋にあがっていく理一
慣れたようにリビングに入って、お湯をわかそうとしている

しかも、鼻歌うたってるし
めっちゃ機嫌ええやん

……そんなにミスドが好きなんや


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