☆ハイローハート
「WOWOW見てい?」

理一がそう言いながらテレビをつけたけれど、格闘技ではなくて映画放送中だった

切ない音楽
男女がすれ違う映画なのか、お涙頂戴シーンがくりひろげられている

相変わらず大きな態度でソファーに座ってドーナツを食べる理一
アタシは床にペタンと座って、ローテーブルにコーヒーとドーナツを置いた

「そういえば今日あこの家に来るのに、なんであこと一緒に帰ってこなかったんだよ」

「ああ、国坂くんが駅でアタシを待っててくれたから」

「国坂って……こないだの?」

「うん」

「……一体どんな手紙よこしてきたわけ」

「めっちゃ丁寧で真摯な手紙」


と答えると、理一がドーナツを口につめこんでコーヒーを手に取った

「あのな、手紙なんざ丁寧に書くのは簡単なんだよ」

もごもご聞こえてくる

「そう??」

「拝啓、本日はお日柄も良く……葉っぱのじゅうたんが……なんたらかんたら」

……葉っぱのじゅうたん???

アタシは理一の顔をキョトンと見た

……葉っぱのじゅうたん???
え、何そのかわいいスピーチ
手紙の冒頭文じゃないし!!

「ではこれにて失敬」

いや、“拝啓”の結語は“失敬”じゃないからね

つっこみどころ満載だけど、理一本人はいたって本気な顔をしているから悩む

「そう書いてあるからって相手が誠実とは限んないんだからな」

「わかってるけど……
気軽に声かけて携帯の番号聞かれるより全然誠意があると思わん?」

「なんでそんな国坂の肩もつの?」

「理一が一方的に国坂くんのことを悪い人ってきめつけるから……」

「国坂国坂って」

「理一が聞くからやん……」

もう、なんで、こうなるの

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