☆ハイローハート
理一はもう一つドーナツを取ると、ふてくされたようにソファーにもたれかかった

アタシもテレビに目を向けると、恋人達がベッドの上でもつれあっている

アタシ達のかもしだす雰囲気と正反対すぎて、せっかくのラブラブな情景がばかばかしい


「ナルの言ってた話って、マジ?」


……今日は、やけに質問してくる

「ナル、何言ってたっけ??」

「遊園地で」

アタシはポンと手を叩くと「ああ~、脚色しまくりのキスの話??」とうなずいた

「ナルがキスしてきたのはほんまやけど、話のほとんどは大げさ」

「普通、油断してキスなんかされるか??」

「油断って、真っ暗な中におばけが出てきて“わっ”ってなってるところにいきなりキスされて……
あんなんキスっていうより衝突事故みたい」

「口が触れ合ったらキスはキスだろ
どっちかが意図してたらそれは事故じゃない」

「じゃあそう思っとけば」

「なんだよソレ」

「だってアタシはあんなんキスの内にカウントしたくないもん」

「は?」

「アタシはロマンチストやから、キスっていったらもっと……
そうそう、こんなんがいいねん」


テレビの中ではさっきまでベッドで絡み合ってた男女が、今度は余韻の残るまま男が帰ろうとしているシーン
女は下着の上にシャツを羽織って玄関まで見送りにきていて……
熱い抱擁のあと、濃密なキス……そしてもともとはまるで一つだったかのように再び抱き合った


「これは、作りものの話だろ」

「だから、ロマンチストやってゆうてるやんか」

「意外」

「やろ?内心“もっと抱っこしてくっついてて欲しいー”とか思ってるけど、引かれるから言われへんねん」


というとアタシはハハッと笑った


「なんか、みさきにくっつくと“暑苦しいから離れろ”とか言われそうなのにな」

……どんなイメージですか、アタシは


< 146 / 756 >

この作品をシェア

pagetop