☆ハイローハート
「入試でも諸岡さんの英語の成績はトップクラスだったから、狙えば行けるわよ」

……英語は自信がある

「一年間って、いつからいつまでですか?」

「今年7月の夏休み前から、二年生の夏休み直前まで」

「……あの、母親に相談してから返事します」

「そうね、それがいいわ」


アタシはぺこりとお辞儀して教室に戻る


アタシの父親はオーストラリア人だと、かつて母親が言っているのを聞いたことがある

意識していたのか、アタシはその頃から英語を意識していて

(いつ父親に会ってもコミュニケーションをとるのに困らないように)

と人より勉強熱心だった

他の教科はさっぱりだけど、英語なら……中間までの少しの期間でも勉強すれば、いい点数とれる、と思う


思ってたより神妙な顔をして教室に戻ったからあこに心配させてしまった……


MJはチラリとこっちを見た後、すぐ視線を机に戻すとタロットをスマートな手つきでめくっていく


降り出しそうなままくすぶっている厚い雲にどこか急かされながら家路についた

帰り道であこに留学話を持ち出す


「へえ!すごいね、わざわざ声かけてもらえるなんて」

「うん……英語は得意やしな」

「まあ、でもせっかくの夏休みが台無しになるけど」

「ほんまに!高校一年生の夏は一度きりやのに~」

「どうするの?」

「多分母親は“行きたかったら行けば”っていうやろし……」

「…………うん」

「留学は、アタシの希望やし」

「……理一は?」


アタシは一瞬ぎくりとした間を置いて「理一は、彼氏ちゃうから」と言い切った

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