☆ハイローハート
返事をかえさないクリーム色の壁を一瞥して「いってきます」と呟いた
さすがに夏服のスカートはスースーする
むりに詰め込んだジャージのせいで不恰好に膨れたカバンを、片側に寄せた髪と逆側の肩にひっかけた
百均で買った奇妙な顔をした魚のキーホルダーについた家鍵と
ゴールドのハードケースにはめこんだスマートフォン
玄関の扉をあけると、春の風が強く顔にあたって一瞬目を閉じた
目につきささった前髪を人差し指でよけて、うつむきがちに薄く目を開くと足を交差して立つ女の靴が目に入った
視線を上げていくと、アタシと同じ高さにある黒い瞳
「おはよ」と声をかけられて
「っおお~~」
オーバーリアクションで驚いた顔をすると「おはよぉ」と返す
相手はニコリと笑顔
「どうせ一緒の学校なんだから、一緒に行こうよ」
アタシは返事の代わりに人差し指と親指で丸を作って見せた
エレベーターに乗り込むと、あこが手の上で何かを小さく跳ねさせている
「チャリキー?」
「そう、だって、あんまり歩くと傷に響くでしょ?」
「もう、ほとんど治りかけや」
「そんなわけないって昨日の今日なんだから、近くの駅まではせめてラクしよーよ」
アタシみたいに長い髪
だけど、アタシとは正反対の黒
アタシみたいに目にかかる前髪じゃなくって、あごまで長さのある前髪が彼女に独特の迫力をプラスしている
一見、ものすごく話しかけにくそうな外見なのに……
口を開いたら気さくで、ギャップが激しい
マンションに隣接する駐輪場で彼女はさびついた鍵に苦戦しつつ自転車を取り出すと短いスカートでサドルにまたがった
「乗って乗って」
後輪の中心にそこに立つための棒が飛び出ている
「今乗ったら、走り出しが難しいで」
そういうと察したのか、おもむろにペダルを踏みこむ足に力を入れて、自転車が遅いスピードで走り出す
立ち棒に片足を乗せてバランスを取ると、ゆっくり進み続ける自転車に飛び乗った
「レッツゴー」
背後からそう言うと、こぐ足を加速させたあこが「全開バリバリ!」と時代遅れの走り屋まがいなセリフを口にした
さすがに夏服のスカートはスースーする
むりに詰め込んだジャージのせいで不恰好に膨れたカバンを、片側に寄せた髪と逆側の肩にひっかけた
百均で買った奇妙な顔をした魚のキーホルダーについた家鍵と
ゴールドのハードケースにはめこんだスマートフォン
玄関の扉をあけると、春の風が強く顔にあたって一瞬目を閉じた
目につきささった前髪を人差し指でよけて、うつむきがちに薄く目を開くと足を交差して立つ女の靴が目に入った
視線を上げていくと、アタシと同じ高さにある黒い瞳
「おはよ」と声をかけられて
「っおお~~」
オーバーリアクションで驚いた顔をすると「おはよぉ」と返す
相手はニコリと笑顔
「どうせ一緒の学校なんだから、一緒に行こうよ」
アタシは返事の代わりに人差し指と親指で丸を作って見せた
エレベーターに乗り込むと、あこが手の上で何かを小さく跳ねさせている
「チャリキー?」
「そう、だって、あんまり歩くと傷に響くでしょ?」
「もう、ほとんど治りかけや」
「そんなわけないって昨日の今日なんだから、近くの駅まではせめてラクしよーよ」
アタシみたいに長い髪
だけど、アタシとは正反対の黒
アタシみたいに目にかかる前髪じゃなくって、あごまで長さのある前髪が彼女に独特の迫力をプラスしている
一見、ものすごく話しかけにくそうな外見なのに……
口を開いたら気さくで、ギャップが激しい
マンションに隣接する駐輪場で彼女はさびついた鍵に苦戦しつつ自転車を取り出すと短いスカートでサドルにまたがった
「乗って乗って」
後輪の中心にそこに立つための棒が飛び出ている
「今乗ったら、走り出しが難しいで」
そういうと察したのか、おもむろにペダルを踏みこむ足に力を入れて、自転車が遅いスピードで走り出す
立ち棒に片足を乗せてバランスを取ると、ゆっくり進み続ける自転車に飛び乗った
「レッツゴー」
背後からそう言うと、こぐ足を加速させたあこが「全開バリバリ!」と時代遅れの走り屋まがいなセリフを口にした