☆ハイローハート
「結局それが理由かよ
俺のせいにすんじゃねえよ」

「女殴って満足??
とにかくもう無理だから」

そう言うと、彼はアタシが手に握り締めていた携帯をパッと奪い取って折りたたみを開くと、反対方向にバキッと折って地面に投げ捨てた


音に驚いた周りの人が振り返って注目の的になる


最悪……



アタシは散らばった二つの破片を拾うと、歩いていった彼と反対側へ走ってその場を逃げ出した

不意打ちで殴られたこめかみのあたりを押さえながら、役目を果たさないケータイをカバンに入れて改札を出た


少し歩くと、タクシーロータリーあたりからギターの音が聞こえてくる


フラフラとつられるように寄っていくと男の子が二人……楽しそうにギターを鳴らしていた

口ずさむように歌う声にハッと目をあげる



……ロシアンブルーじゃん

なんてタイミング


近くに学ランを置いてあぐらで座り、口ずさむことに夢中の彼はアタシに気付いていない


アタシは寄っていくと、ロシアンブルーに視線を合わせるようにしゃがみこんだ


観覧者がいることに驚いたのかこちらを見ると、「ハァイ」とまるで歌うように挨拶される

アタシを見たグレイの瞳は澄んでいて、不思議な色だとじっと見つめた


ギターの音が止み、伸びてきた指先がアタシの目の横に触れる


「女の子が、顔に傷つくっちゃダメでしょ……」

普通の会話も、歌うように話すんだ

その心地よさに返事もできず聞き惚れていた

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