☆ハイローハート
自分のこと心配させるためにウソついてるって思われてもイヤやし……

なんて変な遠慮が出てくる


どんどんと入っていった理一が「何だこれ」とリビングの手前で立ち止まった

アタシも慌てて入って理一の後ろから室内をのぞいて言葉を失う


……ソファーも、ダイニングテーブルもなくて

テレビとローテーブルだけが残されている
マンションに備え付けの棚に少しの食器は残っているけれど、食器棚は姿を消していた

アタシはあわてて別の部屋を見る

クローゼットの中のものは全て残っているけれど、タンスがまるまま一つなくなっている

まわりを見渡してもタンスの中に入れていた物が出されている気配は無い

……下着も、服の大半はあのタンスに入ってるのに……

炊飯器はあるけれど電子レンジはなく

リビングのエアコンは残っているけれど、ベッドルームのエアコンは取り外されていた


母親の置手紙を思い出す

……こんなすぐに取り返しにきたわけ……

ってゆうか、いつ取りに来るとか……せめて先に連絡、とか


物がなくなっただけでずいぶんと広く感じる室内

残されたものが哀れに見えるような錯覚


理一は仕方なく持ってきてくれた物をローテーブルに置いた


アタシは力をなくして、その場にぺたんと座り込んでしまう

……ここで、どうやって生活していくの……


母親に、電話をしなくては……


と思っても動く気力がなくて、ボー然としているとケータイの着信音が殺風景な室内に反響した


「もしもし」

理一は遠慮もなくアタシのナナメ後ろで話し出した

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