☆ハイローハート
黒のTシャツにカーゴパンツを履いて、ぼんやりしながら歩いていた

音を消したままのケータイが震えてるのに気付いたのは、ナルの3度目の電話

「もっしも~し、りいっちゃん今どこよ?」

ふっと見えた建物の時計が16時10分を指していて、「んー、悪い、今そっち向かってる……多分10分以内にはつくから」と答えて電話を切った


一年間オーストラリアって

オーストラリアって

一年って


よく考えて見れば、こないだ国坂にすれちがった時、“そろそろ落ち着いたかと思って……”とか言ってたのはこの事か


国坂には言って、なんで俺には言わねーんだよ

……って、俺が悪いのか


みさきも、あこみたいに……俺の事嫌ってんのかな

普通嫌うよな

「簡単にヤレる」なんて言われたら


頭の中が黒い煙に巻かれたみたいにすっきりしない

本当にみさきに許してもらえるまで謝るつもりだった

なのに、その望みは一年後まで叶うはずもなく消化不良を起こして俺の体内に溜まっていく

すでにそのフラストレーションは俺を蝕んで、心臓をかきむしりたい気分


駅につくと、ナルととよき以外にもクラスメイトの男が2人いて、5:5の大人数


手軽に一番近くのカラオケBOXに入ると、ナルは「じゃー紹介するねー」と男達の名前を順に教えていった

女の子達はご丁寧にも一人ずつ自己紹介をしてくれてるみたいで、ナルがやたらと盛り上げている


「関西人の両親に育てられて、ちょっぴり変なイントネーションの子に育った千夜子です
みんなにはチャコってよばれてまーす!!」


……みさきとは少し違うイントネーションだったけれど、

このタイミングで関西弁かよ……とため息をついた


ドリンクを頼むために俺のとなりに座ってた女が移動してインターホンで話している
ぽっかりあいた俺の横にとよきが何食わぬ顔してドカッと座った


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