☆ハイローハート
ナルのテンションにいつもなら結構ついていく俺だけど、どーしても今日はどうにもこうにも落ちていく

夜も更けて話題がもっぱら下ネタになればなるほど、俺は愛想笑いの数が増えた

とよきがしれっとしてるのはいつもの事だし、妙に冷静な自分を意識するほど帰りたくなってくる


一人の子が「そろそろ終電だ」と言い出して、俺はなんだかホッとした


家に帰ったら風呂に入って、昼間食べ損ねたコーヒーゼリーを食べよう……なんて漠然と考えて

(家大好きっ子か)なんて自分で思っていると、ナルの声が聞こえてきた

ナルは女の子達の家の場所を聞いて、適当に送っていく男を割り振っている
……っつか、ナルの常套手段で、男が気に入ってる女と二人になれるように仕組んでるんだけど

「あっれ~、チャコちゃん理一の家と一緒の方角じゃん
じゃ、理一に送ってもらうといいよ」

そういわれてチャコって女が「いいのかな?」って言うから「別にいいよ」と答えた


カラオケの大音量のせいで耳が少しおかしくなっていて、外の静かさが不思議なくらい

歩いていくと、ネオンや看板の数が減って、どんどん周囲が夜の雰囲気になって

「ナルくんって盛り上げ上手だよね」

「それが仕事なの、アイツ」

「仕事なんや」

って女が笑うと、アップにしている髪の毛先が揺れる

「理一くんは、今日あんまり楽しくなかった?」

「いや、楽しかったよ」

サラッとかわす

「理一くんって、彼女いそう」

並んで歩きながらチラチラと首を傾げてこちらを見る女の顔を見返すと「あー……ごめん、いる」と返事した

いつもならなんとなく話をにごしてしまうんだけど、今日はそういう気分じゃない

「彼女がいるのに、合コン来ちゃダメじゃん」

「だね」

「うまくいってないとか?」

「かなぁ~?」

「ずっと一緒の物食べてると、飽きちゃうってやつ?」


そういって女は笑うと、自販機と少し向こうの公園を指差して「喉かわいちゃった」と立ち止まった

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