☆ハイローハート
学校の方から走ってくる足音が聞こえて振り返ると先生らしき男がこちらに向かってくる

さっき逃げた女共が告げ口したかな……


「「やば」」


あこと男の声が重なり、アタシは突然グンと腕を引っ張られた
学校と逆の方向へと体を引きずられる


あこに腕をつかまれたまま、登校する生徒達に振り返られながら駅へ向かって疾走

……しかも、何故か、男も嬉しそうにアタシの後ろをついてきてる


発車間際の電車に飛び込んで、あことアタシは空いている席に座るとゼーハー言いながら息を整えた

下り列車だから、まだ比較的空いている

前のつり革に両手でつかまった男はさほど息もあがっていないみたいで、ニッコニコ笑顔


「なんで、あなたまでついてきてるの?」


アタシより先に呼吸の乱れがおさまったあこが男を見上げていった

アタシはドキドキがとまらない心臓に手を置いて、何度も深呼吸する


「だって、キミたちといるとおもしろそうなんだもん

俺、滝川洋平、ようへいって呼んでいいよ、キミたちかわいいから」

軽薄そうなノリにあこが片眉をぴくりと動かして、“かわいい”ワードに喜びもせず聞き返す

「近くの男子校のブレザーだよね、何年?」

「三年」

「じゃ、二つも年上だから、呼び捨てにくい」

「んじゃ、洋平くん(ハート)って感じで」

「(ハート)ってどうやって声に出すわけ?」

「語尾をピュンってあげればいいから」


……あことアタシはピタ……と止まった


「あこ、アタシ、マクド行きたい、喉かわいた」

「ん、いいよ」


スルーされたことに「ヒヒ」と男は小さく笑っている


「あ、無視?呼び捨ては無理だけど、無視はできるってか」


男のセリフにあこが抱いている感情が手に取るように伝わってくる

この女、昨日からちょっと思ってたけど……アタシと思考回路が似てるっぽい

テンションのあがる瞬間と、サッと引く瞬間とか

身長も似てるし、髪色や髪型は違うといえど同じロングヘアーやし、マンションも一緒

これで物の趣味や服の趣味まで似てたら……


……軽い双子やな


いや、双子に軽いも重いもないけどな

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