☆ハイローハート
教室から見える空が高くなった

秋と冬の境目くらいに生まれたあこのバースデーがやってくる

とよきが一世一代の勇気を出して

「あのさ、お前の誕生日、良かったら俺と」

といいかけたのに、

「彼氏とデート
このアタシがバースデーに一人なわけないじゃん
なんでとよきや理一達とパーティしなくちゃいけないのよ」

とデートじゃなくて俺たちとパーティだと勘違いされた挙句、サクッと撃沈したのはさておいて


街にクリスマスの気配がチラホラ見えてきた頃

恋人達のビッグイベントを前に、俺は相変わらずバイトと部活の繰り返しでさやかから逃げ続けていた

彼女の家に行くことはなくなって、たまに学校で一緒にお昼を食べたり、学校の帰りに駅までだけ一緒に帰ったりするだけ


相変わらずみさきには電話もメールもできずに、“ゲッツ”の写メを見て唸りながら悩む日々を過ごしていた


焼肉屋のバイトが終わると気温の下がった夜の風に吹かれながら、マンションまで戻ってきた

エレベーターの中のむせかえるようなキツイ香水の香り

6階までの間息をとめて、立ちっぱなしで疲れた足を引きずってエレベーターを降りると、ちょうどあこが玄関から出てきたところに遭遇した

ケータイで話しながら(よっ)とばかりに片手だけで挨拶するから、俺も手を挙げる


「今家だよ」


……彼氏と電話か??


と思いながらあこの後ろを通り過ぎようとすると、黙って腕をつかまれて

「だって、こっちは夜だもん……
ちょっと待って……」

とあこは電話から耳を離して「はい、モロ」とケータイを俺に手渡した

手の上に乗せられたそれを見て固まる


「……何してんの?モロだよ」


……いや、俺が今までどんだけ電話やメールするのを悩んで悶々としてきたと思ってんだよ

心の準備とか、何を言おうとか、テンションとか、色々よく考えなきゃいけねーのに……とゆっくり電話を耳に押し当てて覚悟を決めたけど

「もしもし……」

とすごい小さい声しか出なかった

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