☆ハイローハート
あこが「声ちっさ」と横で壁を叩きながら笑い声を抑えている

『理一ッッ??』

……声、でか

『や~ん、理一~、何してんの?
またあこの家でナル達と遊んでたん??』

「いや、バイトの帰り」

『バイト?何のバイト??』

「焼肉屋さん」

『ええ~!いいな~!めっちゃ食べたいねんけど
もう、焼肉のたれと白ごはんだけでもいいし』

「んじゃ、帰ってきたらおごってやるよ
焼肉のたれ」

『ほんま?え?たれだけ?
白いごはんも食べたいよォ』

「……早く帰ってこれば?」

『フフッ』

「あこ……が、寂しがってる」


吹き出すあこを横目で見て、背中を向けた


「俺、も……WOWOW見れなくて暇だし」

『……そう』

じゃ、なくて……
そうじゃなくて

言いたいのはそんなことじゃなくて

“みさき”と呼びかけようとした瞬間、先に『あこに代わって』と言われてしまってそのまま電話をあこに渡した

みさきはもっと落ち込んでいて、そんな彼女に「ごめん」って謝って、許してもらって仲直りできたら俺の気持ちを伝えたいと描いていたのに、ものすごく明るい声でいかにも“友達”感を出されると……みさきの中で俺とのことはとっくに終わった話で彼女の中に俺は一かけらも残ってないのか取り残された気になる


実際にそうだとしたら??


みさきが帰ってきても、俺なんて眼中になくて……
一年間をこんな思いで過ごしていた自分がバカみたいに思えたらどうしよう

……彼女に想いを伝えたら何か変わるかな

今の俺に、みさきに告白する権利なんて……あんのかな


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