☆ハイローハート
俺は肩を落としてますます重くなった体をひきずって自分の家に向かう

あこが不思議そうな表情でこっちを見ていたけど、目をあわす力すらなくドアを入って行った


みさきのいない時間
俺ができることって……何?


シャワーの熱気で、自分から焼肉の匂いがあがってくる
全身からそのまとわりつく匂いを洗い流すと、最後に冷水を浴びる


……わかりきっている
今更考えるまでもない

上半身裸のまま髪も乾かさないで自分の部屋に戻ると、カバンの中からケータイを手探りで引っ張り出した


みさきの事が忘れられないなら、俺のすることはただ一つ


さやかのアドレスを表示させて黙々と文字を入力していく


今まで散々悩んで、逃げて、どうすればいいのかすらわかっていなかった


みさきの声を聞くと、泣きそうなくらい心臓が痛くて……

指の間をすり抜けていく砂みたいに彼女の気持ちが流れていくのを感じるとこんなに寂しいのに


そんなみさきを引き留めるのは

そんなみさきに想いを伝えるなら

そして、それをみさきに信じてもらいたいなら……


俺がしなきゃいけないことは自然と見えてくる……



どこか楽観的で、卑怯で、逃げ道を作ってばかりの俺を動かしたのは

……また、あこか


そう考えながらメールの「送信」ボタンを押した


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