☆ハイローハート
「ごめん」

彼女との距離は4~5メートル

それは、彼女と俺の心の距離

「それって……チャコさんとかいう人のせい?」

……突然出てきた名前に眉を寄せた


「……なんで、それ」


さやかは口を一文字に閉じたまま少し視線を下げる


「何度か、メール来たんだ」

「メール?」

「理一くんと別れろって……」


チャコちゃんは、いつも二番目に徹していた
俺の前でそんな事は一言だって言ったことはない


「きっと彼女、理一くんのケータイを見てさやかのアドレス調べたんだと思うよ?」

……あり得ない、話じゃない
はなから彼女がいることをカミングアウトしていたんだから、俺はケータイを隠したことはなかったし

言葉を失ったままでいると、さやかは両足を揃えて立って完全にこちらから目をそらした

「それに、少し前……チャコさんが会いに来た」

「……は?」

「“大切にされてるなんて思ったら大間違い、ずっと理一くんはアタシと浮気してたんだから”って……言いに来たみたい」


二番目でもいいってあんなに言ってたのに、全然良くないんじゃん

それに甘えて誘惑に負けていたのは、俺だけど


「でもいいの、理一くんが最終的に選んでくれるのがさやかなら……」


大きな目から流れる涙は大粒で、彼女の頬を伝うと一瞬で地面に落ちていく


「ホントはいやだけど……っでも最後にさやかのところにきてくれるなら、いいの……」


……チャコちゃんは別れを切り出した時、泣かずに怒り出した

みさきは、俺に何を言われても……泣かなかった

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