☆ハイローハート
彼女の目に俺は映っているのかな?
と疑問を持つくらい、さやかの目は涙で歪んでいた

「さやか……ごめん」

「いや、別れない
さやか負けたくないもん、バカにされたくない」

「……ごめん」

「謝ったっていや、絶対別れないから!!」


そう言うと、突然俺の体を突き飛ばして走り出してしまった


「さやかっ」と追いかけようとしたけれど、彼女は逃げるように走っていく


あっという間に階段を半分ほど駆け下りて……彼女の背中を見ていると、それがバランスを崩したのがわかった


「……さやかっっ!」

と呼んだ時にはもうすでに彼女の手は空をつかんでいて……

転がり落ちた彼女の体の上に一足遅れて、カバンが周囲に中身をばらまきながら落下していった



遠くにサイレンが聞こえる


これは現実のサイレンなのか


俺の頭の中にだけ響くサイレンなのか


そんな判断すらつかないまま、一目散にさやかに駆け寄って彼女の体を抱き起こした



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