☆ハイローハート
さやかの入る病室の前までくると、俺は立ち止まった

父親はそんな俺に構うこともなくサッサと入っていき、母親は立ち止まると「今日は遅いし、理一くんも疲れたでしょう?帰って休んで」と心労が見え隠れする笑顔を見せた


「あの……また見舞いに来ていいですか?」

「もちろん」

「学校へ行けるようになったら、俺……送り迎えとかしますから」

「ありがとう、さやかの意識が戻ったら伝えておくわ」

「じゃあ、失礼します」

と俺は深々と頭を下げて、病院をあとにした

20時を過ぎていたから通常の出入り口は戸締りされていて、緊急用の通用口を出て空を見上げると、細く尖った三日月が雲の上に浮かんでいた


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