☆ハイローハート
子供にナンパされて、一緒にミニカーで遊んでたみさき
すっかり懐かれて、男の子が名残惜しそうに帰っていったこと

『さっきの子が持ってたのはブルドーザーはブルドーザーでも、ただのブルドーザーちゃうねんで』

『何それ、なぞなぞ?』

『ブルドーザーやけど、あれは“コマツ”ブルドーザーやねん』

『……あっそう』

『あの子供のこだわりを大切に育ててやってこそ、人生の師やと思わん?』

『お前、じじいか』


あ、やべ、思い出し笑いしそう

みさきが身振り手振り話していて、その指先にあこやみさきが好きそうな色のマニキュアが施されていたことまで思い出す


『ブルドーザーでまとめてしまうのが大人の世知辛いところやん?
ブルドーザーはブルドーザーでも、あえての“コマツ”ブルドーザーっていうのが子供のハイセンスなわけ!』

『パンはパンでも空を飛ぶパンは何でしょう、みたいだな』

『空を飛ぶパン??……食べられないパンじゃなくて?
っつか、フライパンのフライって“fly”のフライちゃうやろ!
理一、頭わるっ!』

みさきがパタパタと羽ばたくマネをしていた

『ピーターパンだろ、ピーターパン』

『え?ピーターパン??』

『空を飛ぶパンはピーターパン
みさき、頭わるっ!』

『何なん、その一ひねり半くわえて着地したなぞなぞ』

『一ひねり半ってなんだよ
お前の頭が固いだけだろ……
寝るときは子供みたいにくっついて寝るくせに』


そういうと、「なんか、ここ暑いな」とごまかすように手で顔を扇いだみさき
積極的なんだか、恥ずかしがりやなんだかよくわかんない女だったな……


(お待たせいたしましたー)

という声にハッとして、トレイを持つとさやかの方へと向かった

さっきの子供はもう他の事に夢中になっている

……みさきだったら自分の持ってる物全部差し出して、きっと一緒に遊んでる


歩いてきた俺に目を向けたその子がニコッと笑うと、下の歯が二本だけ生えていてめちゃくちゃかわいかった



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