☆ハイローハート
俺の拾ったタロットの一枚をスッとめくると、笑みを浮かべた

「複雑に考えないで
元々短絡的な考えだから今のような状況に陥っているのに、今更深く考えたって無駄なことよ
……行きはヨイヨイ、帰りはコワイっていうでしょ
蜘蛛の巣にひっかかったんだもの
自分の手足がちぎれることは覚悟で、ましてや蜘蛛の巣の主は殺さないと」


殺すって……


俺はほとんど放心状態でじっとテーブルを見つめていた


MJの小さく細い指がもう一枚のタロットをめくった


「周囲の協力って、力になるものよ
情けは人の為ならずってことわざの意味、ご存知?」

「……情けをかけてもその人の為になりませんよって事?」

久々に声を出したかのように声がかすれる

「違うわ、人に情けをかけるとめぐり巡って自分に返ってくるから、人には親切にしなさいということよ」

へえ……


「じゃあ、芥川龍之介の“蜘蛛の糸”を読んだことは?」

「……ないです」

「貸してあげるから、読んで」

……かいつまんで説明してくれるとかないんだ……

と思ってると、「あらすじ教えてもらえるなんて、甘えないでよ」とまるで俺の心を読んだかのような言葉が返ってきて焦る


MJはあこととよきを交互に見ると、苦笑いした


「どうしてあなた達がしょんぼりしているの??」


そう言われて見れば、あこもとよきもめちゃくちゃ渋い顔をしている


「あなたは、周りの人間に恵まれているのね
……それは、人徳なのかしら??」


MJは俺の目を揺るがない瞳で射た

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