☆ハイローハート
「お部屋に置いて悪い気を吸い取ってもらって、浄化された空気の中で体を清めるの
それが幸せへの道、開運につながります」


両手をパーに広げて、(さあ、どう?)とばかりに石をアピールされる


「こんな石、部屋にあったらダサくない??」

俺は思わず率直な意見をのべてしまった

別にすっごいおしゃれな部屋ってわけじゃないけど、それなりに統一感があるようにはしてるし


「石にダサいもかっこいいもないのよ
自然の美しさがわからないから、人の心の真の美しさも見まがって……」


今日のMJは自分のテリトリーだからか妙に饒舌で……


「でも俺今日7千円しかもってないっすけど」

と言うと、MJは「今度までにしっかり、いい石にしておくわ」と大事に元の位置に戻した

……もっと高いんだ


それからはじまったあことMJのガールズトークに圧倒されながら、冷めた紅茶を全て飲みきった

帰る間際に「あの、お友達割引は……」って聞くと

「今日占ってないわよ
だって、調子悪いんだもの」

と皮肉っぽく笑っている

そして、玄関先でMJに「はい、これ」と一冊の本を手渡された

“蜘蛛の糸 芥川龍之介”

「欲にまみれた人間が、どう落ちていくのかよくわかるわ
芥川作品は、人間の本質が丸見えでぞっとする」

確かに表紙からしてちょっとおどろおどろしい


日本人として、賞の名前にもなるくらいの作家の作品は読んでいても損はないか……


と受け取った


「煩悩や偽善の心がわいてきたら、この本を読んで気を強く持ってね」


……俺、そんな意思弱そう??

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