☆ハイローハート
さやかから連絡があったのは17半過ぎ

「一時間くらいなら大丈夫だけど」

と言われて、俺はそれまでひたすらに読んでいた芥川の本を丁寧に机の上に置くと、ケータイ片手に家を出た


煩悩はしっかり振り払われてるはず

MJに言われたことは、結構胸に突き刺さってる

変な話だけど……MJに嫌われてたらみさきとの未来もないって感じがする

俺は修羅場をむかえるかもしれないとすら覚悟を決めていた



会ったのはさやかの家の近くにあるファミレス

注文した飲み物が運ばれてくるまでの間、さやかは「春休みはバイトしようと思ってたけど、怪我しちゃったから結局何もできなかったな」と左腕を見やっていた

「そっか」

「理一くんは春休み中何してたの?」

「俺は、ぼーっとしてた
とよきはあことデートしてるし、ナルはめっちゃかわいい彼女ができたし」

「小林くん、彼女できたんだ……」

「ああ、女子校に通ってる女の子」

「合コン?」

「うん」

「理一くんも会ったことあるの?」

「ない、ナルが“あまりにも可愛くて誰にも見せたくない”とか言ってる」

「そうなんだ、愛されてていーなー」


さやかのその一言で二の句が次げなくなる

タイミングよく飲み物が運ばれてきて、場が持ち直された


…………

「話って、何?」

切り出したのはさやか

「さっきから理一くん、気が気じゃないって顔してる」

「……ごめん、さやか」

と真正面にある目をみると、彼女はすっと視線をずらしてしまった

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