☆ハイローハート
家の鍵を探そうと歩きながらカバンに手を入れた時

うつむいたとよきから聞こえてきた情けない声

「6時間待った」

「?」

見上げると同時に、とよきお得意の締め技をかけられる

体の前面が余すところ無くくっついてとよきの肩にあごを乗せると、整体でもされてんじゃないかと思うくらい背筋が伸びているのがわかった


「今日、駅前のサブウェイで、お前が帰って来るまで」

「……6時間?」

「お前が何してるか毎日気になるし
毎晩お前の声、聞きたいと思ってる」

「……そう」

うまい返事が見つからない


「あこのこと信じてないわけじゃない
ただ、俺がお前の元カレに勝てる自信がないだけ」

「忘れられるように努力するって言ったくせに」

「勢いでな」

「アタシのハートにバンジージャンプしたんでしょ?」

「勢いでな」


勢いって何よ


あごを引いてとよきに何か言ってやろうと思ったら、目が合った一瞬で唇がふさがれていた


よく考えなくても

ここは駐輪場で

ってことはもちろんマンションの人がやってくる可能性は100%に近いくらい確実で

誰かに見られたりとか

誰かに見られたりとか


……理一、とか

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