☆ハイローハート
みさきの視線が俺を通り越して行く

そして見たことない優しい微笑みを浮かべると、スッと俺を避けてしまった


「国坂くん」


え?国坂??


みさきはトランクをひきずって行ってしまう

俺に背を向けて




黒いシャツの中から黄緑のTシャツが少し覗いている

しかも黒のパンツで暑苦しい


そして気まずそうに片手を挙げると「来ちゃった」っと笑った



……来ちゃうなよ



みさきが笑っているのがわかる


国坂はみさきの方に向かって歩いて行くと、トランクをひっぱる彼女の手に自分の手を重ねて



「会いたかった」



……小さい声だったから聞こえなかったけど、はっきりと口がそう動いた



俺とみさきの間を何人も何人も人が通って行く


みさきと国坂の間は誰も通らないのに



防音のはずのガラスの向こうに発着する飛行機の耳障りな音が、二人の会話を完全に消してしまった


みさきを一年間待っていた男は、俺だけじゃなかった


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