☆ハイローハート
「そうだな……咳が出るとか」

先生の言葉に弱々しく首を振った

アタシが知っている限りでは咳は出てない


思いがけない病名を告げられて、頭が真っ白になってる

心筋症って、なんか重病っぽいじゃん

どうしよう
どうしよう


「足がふらついたりとか」


先生がそう言った瞬間にアタシは先生の顔を見たまま止まってしまった


「……カブは、小さい頃からあんまり後ろ足が強くなくて」

「ああ、じゃあ関節とかの問題かな
うん、関係ないかもしれないし、関係あるかもしれない」

「でも確かに、最近また……後ろ足の調子が悪くなってて……」


ずっと、サインはあったんだ


アタシが勝手に(平気平気、若いし大丈夫)って判断してたから……


「大丈夫、落ち着いてるし、大丈夫大丈夫
とにかく今日一日預かるね
それで詳しい検査しよう
ちゃんと治療すれば大丈夫だから
……明日の今くらいの時間においで」


先生にそう言われて、うなずいた


立ち上がると「もう一回カブ見ていいですか?」と奥を指差す


微笑む先生を横目に小窓に両手をついた


カブは目を閉じて横たわったまま

こっちを見ない


どうしようもなくて、アタシは診察室を出た

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