☆ハイローハート
ずっと昔から通っているから診察代は明日でいいと言ってもらえて、アタシは夕焼けの赤い雲の下を歩いていた


赤信号で止まるのは、条件反射

頭の中も心臓も不安で埋め尽くされている


カブはまだ3歳

丸い目には生気が溢れていて、いっつもサリーに負けじとがんばってて

無邪気で……

……あのいたずらッ気たっぷりの瞳が二度とアタシを見てくれなかったどうしよう


食が細くなったのも

足の調子が悪いのも

放置していたのはアタシのせいだ


アタシが一番近くにいたのに

アタシしか気付いてあげる人がいないのに


病魔がカブを襲う幻影が浮かんで寒気がした


赤く染まる空が不穏に見える

感情一つで、景色が変わっていく

ゆっくり流れる雲ですらわざとらしくみえて、目にじわっと涙が浮かんだ



カブがアタシの目を見つめて何かを訴えかける時

首を傾げてまばたき一つせずまっすぐに届く視線

遊んで

ボクを見て

気付いて


カブのサインに、気付いてあげられなかった



そう思うと涙がとまりそうになくて……必死に指で涙を拭った

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