☆ハイローハート
目の下くらいまであって横に流してた前髪も、襟足も、耳にかけてた髪も全部短くなって、なんか落ち着かない

短髪じゃないし、あこの兄ちゃん的にはこれでもまだ長いって思うらしいけど、俺にとってはものすごく短くなった気分


汚れてもいいTシャツにチノパンで、なくなった襟足を何度もさすりながらバイトへ向かった


今日は地元のおっちゃん達が草野球の打ち上げで予約を入れているからきっと忙しい
……っていうか騒々しいと思う

いっつも俺に「女のオトし方」を伝授してくれるんだけど、それがなんとも昭和の香り漂ってちっとも参考にならないんだ

誰がデートでチークダンス踊るかっつの


「こんちゃー」


って焼肉屋のおっちゃんとおばちゃんに挨拶しつつ店に入ったら

野球のユニフォームを着たおっちゃんが数十名すでにビールで乾杯しててずっこけた


「おうバイト!おっそいじゃねーか」
「駆けつけ3杯だな」
「塩タン10人前~」


「ちょ、ちょ、待ってくださいよ、俺今来たばっかだし」

常連のおっちゃんが勝手にコンロに火をつけている

別のおっちゃんは勝手知ったるってやつで、俺の首に黒のエプロンをひっかけると
「生ビール追加で」
と空いたグラスを渡された


「ごめんね理一くん」

とおばちゃんは苦笑い

俺はいきなり人と火の熱気で熱くなった店内の換気扇を全部オンにした


食う肉の量もすごいんだけど

何がすごいって……

生ビールの注文数がすごい


5杯持っていったら、追加で5杯とか

まだ残ってるのに、予備の1杯とか


っつか、今日すでにサーバーのビール入れ替え二回目なんすけど

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