☆ハイローハート
外を出ると一気に肌がじっとりするように感じた

湿度が高くて、風もないから熱がこもっている

あこの家のピンポンを鳴らしてしばらくすると、ガチャリとドアが開いた

「……あれ、いる……
とよきと花火だったんじゃねーの?」

「うんちょっとね、アタシの友達がさっきまで来てて、今とよきが来たところ」

「ふーん、あ、これ桃、母さんから
とよきと食えば?」

「わあ☆サンキュー!」

「んじゃ、そーゆうことで」


と早々と玄関を出た


非常階段を降りていく


花火とか桃とか、口実は何でもよくて

ただ前みたいに一番近くで声を聞きたいだけ

彼女の目にたまに俺がうつって

俺の話に彼女があいづちをうって

笑いたいだけ



空間を切り取るようにドアが浮かんで見えた

滅多に使われないドアは軋む音をたてずに静かに開き、蛍光灯の青白い光を拡散する


もっと大きな音を立てて階段を降りてくれば良かった

もっと勢いよくドアを開けば良かった

みさきがいるかどうかケータイで確認してから来れば良かった

俺はいつだって後悔ばっかりで

みさきのこととなると、小さなきっかけ一つでさえうまくいかないんだ


別に存在を忘れてたわけじゃないけど

だけど実際一緒にいるところを見たわけじゃなかったし

だから

だから???

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