☆ハイローハート
運動場の片隅
少しだけ校舎の影になっているコンクリートの上にあこと並んで腰を下ろしていた

洋食屋さんのハンバーグ弁当を見て「うさんくさい占いに左右されてしまった」と不満そうに呟いているのを聞きながら、アタシはパンを開封した

「あ、そうだ、モロ今度一緒にライブ行こうよ」

「ライブ?」

「うん、アタシの彼氏がバンドしてて今度ライブすんの」

「へえ、バンドマンかぁ……どんな人?」

「……写メ、見る?」

「見る見る!!」


あこが携帯を取り出してしばらく操作すると、画面をこちらに向けた
恥ずかしそうにしている彼をナナメ横から撮っている

「……濃い」

「端整な顔大好きなの
彫刻みたいに整った顔」

アタシはもう一度携帯をじーーっと見て「彫刻……ねえ……」ともらす

「かっこいいでしょ」

と同意を求められても……

「タイプじゃないわ」

同意できずに首を傾げて、壁にもたれ再びパンにかじりついた

タイプじゃないと言ったのに何故かあこは嬉しそうに「あ、そう」なんて自分の携帯をパタンととじて、ひざにのせる

「友達とは男の趣味が違う方がいさかいが起きなくていいの
もしモロがアタシの彼氏を“かっこいい”って言ったら、ちょっと距離置くね」

「うん、きっとそれは正解やな
でも、男の方はわからんで~、もしかしたらめっちゃアタシの事タイプかも知れんで」

「どうする?もしアタシの彼氏がめっちゃ影で口説いてきたら」

「その写メの彼氏やったら、タイプちゃうからあり得んな……
どうしよう……
あこには言いづらいしな!」

「だね」

「でも言うかな!
“めっちゃ言いづらいねんけど……あこの彼氏さあ……”
まで言うたらもう察して」

「わかった」

今から一体何を言い合わせているんだか

だけどアタシ達はけっこうくそ真面目にその状況をリアルにシミュレーションしていた



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