☆ハイローハート
お兄ちゃんは美容師の専門学校に行くかたわら、週末にクラブでバイトしていた

土曜日の夜に暇つぶしがてらに遊びに行くことがあって、とよきと一緒の事もあればアタシが一人だったりモロが一緒だったりすることもある

自分がいない状態で行かれるのはイヤらしいとよきには言わずに行くこともあった

今日もそう

サリー&カブは、珍しく21時過ぎに帰ってきてそのままシャワーを浴びると寝てしまったママの部屋にいる

モロは国坂くんとデートだって言ってたし、とよきとも約束してなかったし、駅まで自転車で行って電車にとびのった

お兄ちゃんが働いているところだし、警戒心はない

行けば店員さんが相手してくれるし

お兄ちゃんが悪さしてないかたまに抜き打ちで偵察にくる彼女に会えたらラッキーで、カウンターで一緒にお話することもあった


駅の改札口とつながっている歩道橋のはしっこを車や人の流れを横目に見つつ歩いた


土曜日の夜だから意外と人通りが多くて、ただぼーっと見ていただけなのにふっとある場所で視点が止まった


……あれ、とよきだ

私服で、暑そうにうちわで扇ぎながら、隣にいる女の子と話している

誰だっけ?
知ってる子だっけ?

中学の同級生とか、そういう類の人物を思い出してみてもどうやら該当しない

じゃあ、高校が同じとか??
スイミング??
もしかして、あれがまいまいか??

足を止めて歩道橋にひじをつき乗り出すと、女の顔をよく見る

まいまいといったところで、彼女の顔も知らないから確かめようもないんだけど


路肩に駐車する車から聞こえる大音量の音楽

ウケ狙いかのような、アニメソング

とよきはさりげに彼女と場所を入れ替わると、自分が車道側を歩いた


……ふ~ん


アタシは体を起こして、ついたかついていないかわからないほこりを払うと、お兄ちゃんの店に向かって歩き出した

< 471 / 756 >

この作品をシェア

pagetop