☆ハイローハート
「すごい偶然、嬉しい」

「すごいね、その荷物」

「うん、バーゲンなの」

「そう」


さやかは全く減っていない俺のアイスコーヒーを見て、自分の飲み物を買いに行った


「誰かと待ち合わせ??」

「時間つぶし、この後行くところがあって」

「そうなんだ、じゃあさやかも時間つぶしに付き合うね」

「ハハッ、サンキュ」


彼女は無邪気に何を買ったのか説明してくれたり、夏休みにどこに行ったのか話したり、懐いた笑顔
昔と変わらない子犬のように見上げてくる瞳

距離感が付き合っていた当時そのもので、俺は現実を確かめるように窓の外に目をそらした


相変わらず沈む夕日の日差しはきつく、地面にはねかえるだけでも目が痛い

節電モードに入っていた俺のケータイの画面が突然明るくなり時間差で震え出す

メールを受信して確認するとそれはあこからで“MJもうフリーだからいつでもどうぞって。ってゆうか、連絡係とかめんどくさいから自分でMJに連絡とって”とMJのメールアドレスが添付されてあった


……やった
人気占い師のメアドゲット

なんとなく百人力な気がする

俺はそのメアドを電話帳に登録し、「理一です、今から向かいます」とメールを送信した

俺の目の端で何かが夕日を反射して光った


「俺そろそろ……」と言いかけてその光の正体を確認すると、一瞬で体が凍る

彼女の薬指に光るのは、俺が去年プレゼントしたリング

あの日観覧車の中で輝いたリングは、今もなお四方八方に透明の光をのばしている


--蜘蛛の巣だ



「もう行く時間?」

俺の言葉の続きをさやかが次いだ

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