☆ハイローハート
あこが来なかったら、俺はあの時みさきをちゃんとかばえていたかな??

あの女たちの言葉は俺の発した言葉とリンクして、すごく痛かった

だから今だって、みさきを思いやって言えるセリフは一つも見つからない


突然少しだけ照明が落ちて、置いてあったグランドピアノの前に一人の女性が座った


……楽器を持って出てきた人達がイスに座るとはじまる演奏


こんなのあったんだ

斜め横にみえるみさきの腕は、夏を越したと思えないほど白い

相変わらず柔らかそうな髪はふわふわしてて、俺の指は簡単に通り抜けていくんだろう


何度かまばたきするまつ毛も

生クリームを拭った時に完全にとれてしまった、少しだけラメの残る唇も

耳にぶらさがるループピアスですらも

彼女を彩るもの全てが俺とは接点を持たないような気がして、それは自分のせいなんだけど……

だけど、手をのばさなければもっと遠くなってしまいそう


だまってみさきの肩を叩くと、彼女がこっちを見た

パーにした手を見せると不思議そうに俺の手のひらを見てるから、テーブルに置いてるみさきの手に視線をやる

もう一度パーにした手をみさきに近づける

みさきもパーにした手を俺に見せるから、微笑んでうなずいた


俺の真意を探っているみさきの目を見ながら、手をそっと合わせると……夏なのに冷たくて

彼女の指の間に指を通して握ると、たまらなくなる


急激に心は満たされて

そしてあっという間に抱きしめたい欲求が生まれてくる

欲しがりなのは多分生まれつき

兄ちゃんの持っているおもちゃがうらやましくて、やっともらえると思ったら“弟にあげなさい”って言われて……


みさきは俺の手を握り返してこないから……反対の手でみさきの指をそっと曲げて包み込む


“諦めなさい”って言われても、“弟にあげなさい”って言われてもいつも反抗はしなかった
欲しいけど、執着しないようにしていたはずなのに……

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