☆ハイローハート
「誰にメール?」

「女」

「あ、そ」

「かわいかっただろ?大西ルカ」

「……誰よ、大西ルカ」

「見たんだろ?」

……見たけどさ

「大西ルカはナルの可愛い子リストにインしてるからな」

「超どうでもいいんだけど」

「……あーあ、こんな風に言うつもりじゃなかったのに」

「??」

「もっと、なんつーか……ここぞって時に言いたかったのに」


返事はせずに、流れる紺色の空と暗い水の境目を見ていた


「いつもお前が言ってるけど、俺って水中で生活できるくらい水中が楽なんだよな」

水中が好きじゃなくて、楽なんだ

「だから、将来水泳関係の仕事につくのは容易っていうか……
うん、まあ……妥当というか、普通というか、先が見えてるというか」

「だね、アタシも想像つくよ、とよきが水泳のコーチしてる姿」

「だろ?
……だけどさ、それじゃダメなんだよ」

「何がダメなの?」


そう聞いても、とよきはそれからしばらくじっと黙ってしまった


ドアの向こう側から、ピアノの音が聞こえてくる

そのまま夜の空に吸い込まれていく音符の幻影

「……俺、国立大目指してる」

「え?」

「司法試験に受かりたいから、国立大目指してる」

「え?……は?」

「だから予備校に通ってる」

司法試験?????


< 537 / 756 >

この作品をシェア

pagetop