☆ハイローハート

* * * * *

龍一のカテキョ、って言っても授業についていきやすいようにほんのちょっぴり予習する程度のレベル

「なあ、龍一……」

龍一は問題集の和文を英訳している

「アタシって、キレイなお姉さん?」

「……はい?」

「でも龍一はアタシが横にいるから緊張して勉強できひんって感じじゃないし、関西弁の姉ちゃんくらいにしか思ってないか」

龍一は一瞬止まったペンを再び忙しく動かしながら「友達がキ、キレイって言ってたけど、俺は思ってねーな!!」と不自然に怒っている

「……龍一」

「……なんだよ」

「スペル間違ってる」

龍一はピタリと止まるとペンを消しゴムに持ち替えて消さなくてもいいところまで消してしまった


「なんでそんな動揺してんのよ」

「してねーよ」

「龍一も実はアタシを超絶美女やと思ってるとか」

「思ってねー!」と消しゴムのカスを投げてくるから、頭をイイ子イイ子して笑うと

「子供扱いすんな!」

と手を払いのけられてしまった


こうしていつもと変わらない雑談をしていると、理一がバッタンとノックもなしに入ってくることが多いんだけど……

今日は帰ってこない


勉強が終わって、理一ママに鶏肉の特徴について教えてもらいつつ照り焼きチキンを作っていても帰って来ることはなかった


「ママ、最近理一いつも遅いの?」

「最近夕方になると少し暑さがましになるからって、練習してるみたいだけど」

「ふ~ん」


それからしばらくすると理一パパが帰ってきて、ママと龍一とアタシの4人で食事をしていても結局理一が帰って来ることはなく、会いたいような……会いたくないような……そんな気持ちに襲われながら理一の家を後にした

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