☆ハイローハート
コンビニに行こうと夜の19時過ぎに家を出ると、玄関を開けた瞬間に秋の訪れを感じさせる風が半そでの腕をなぞった


真夏を過ぎて、日が落ちるのがほんのちょっぴり早くなる

だから外はもう暗い


エレベーターを待っていると、隣の家から男の人が出てくるのが見えた


「こんばんは」

と挨拶すると、軽く相手も頭を下げる

そういえば前に宅配便を代理受け取りしてくれたんだった……と思い出してエレベーターの中で「こないだは、宅配便受け取っていただいて、ほんとにありがとうございました」と改めて御礼を述べた

「いいえ」

とそっけない返事

着ているシャツは、タンスから引っ張り出したことがまるばれなくらいしわだらけ

1階に到着するまでの短い時間でも、沈黙の気まずさがこないようにと会話を続けた


「おかげで助かりました」

「使ってますか?」

「はい」


チンと1階に到着して、「お先に」と相手は上目でアタシをチラリと見て先に行ってしまった


何買おうかな~~

コーヒーゼリーと……

いや、待てよ

せっかく理一ママに料理教えてもらってんねんから、駅近くのスーパーまで遠征して食材を買ってきて作ってみようかな

家に使ってない調理器具がいっぱいあるし!!


『使ってますか?』


……え?使ってますか???

時間差でお隣さんの言ったセリフに違和感

中身が何か知ってたみたいな言い方

開封されてなかったよな?とか思い起こしながらマンションの表に出て歩き始めると、近くの公園から男性が謝罪して哀願する声が聞こえてきた

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