☆ハイローハート
* * * * *
静かな静かな平日の図書館
仕事をさぼっているのか本を読むことが仕事なのかスーツを着たサラリーマンや、アタシ達と同じく勉強をしに来ている学生
ずらりと並んだ大きな書棚の間に置かれた脚立に腰をかけて、天井の空調を見上げていた
古い建築様式の天井は高くて、使われていないアンティーク調の照明がぶら下がっている
実際に点灯しているのは味気ない蛍光灯
高い場所にある無駄な空間は、夏は涼しくて冬は寒そう
両側から迫ってくるように感じる本の圧倒的な多さに閉じ込められて、アタシはボー然としたまま何も考えていなかった
真っ白な未来のページに、ハッピーな出来事を綴っていきたいのに
めくってもめくっても追いかけてくる……アタシを呼ぶ声
アタシはそれを振り払うかのように横の書棚に目をやった
“ダイエット関連”とカテゴリーわけされた本が並んでいて、立ち上がり物色
――マインドコントロールで食欲抑制
……なんかちょっと怖い
――夜な夜なヨガ
……タイトルのセンス!
――Dancing Diet
手を伸ばしても届かなくて、脚立に足をかけるとガタガタした
そのガタガタがちょっと面白くて、わざとガタガタする
フフ……
ニヤつきならが両手を広げてガタガタしていると、「それ、楽しい?」と声がした
国坂くんが口元を本で隠しながら笑っている
「あの本が取りたいの」
と少し上を指差すと「これ?」と少し背伸びしただけでそこに手が届く国坂くんがDancing Dietを引っ張った
ぎゅうぎゅうに詰められていた本
横のマインドコントロール本や夜な夜なヨガ本を巻き込んで5~6冊、バサバサと落ちてしまう
アタシ達は慌てて落ちた本を拾った