☆ハイローハート
カテキョが終わる頃にちょうど理一ママが帰ってきて、「今夜はこれ作るよ」とレシピをプリントアウトした紙を見せてもらった

下ごしらえの段階でシリコンスチーマーを使用している

「ママ、シリコンスチーマーあるの?」

「ああ、流行ってるあれでしょ?
ないけど、普通にラップしてチンすりゃいいんじゃない?」

「アタシ持ってる!
マッハで持ってきます!!」

「え??」


とママが聞き返す内にキッチンを出た


「家に置いてても宝の持ち腐れやし、ここで一緒に使いましょ~」と言い残しながら理一の家を出た


非常階段を駆け下りると、ポケットに入れたケータイが何度も足にぶつかる

重い扉をあけて5階に出てくると玄関のドアにまた紙が貼られてあるのが見えた


――宅配便、預かっています


隣の部屋番号が書かれてあって、アタシはため息をついた

無愛想な人でちょっとつかみにくいから、あんまり関わりたくないな~

……なんで宅配の人も隣に預けるかな

宅配会社に電話して隣人に預けないように言おう……


とその紙をピッとドアから外して、隣宅へ向かった


インターホンを鳴らして「諸岡ですけど~」と明るめに名乗り、しばらくしてガチャリとドアが開くと、ササッと周囲を見渡して「どうぞ」と室内に招かれる

「なんか、また荷物預かってもらってるみたいですいません」

玄関に誰かのサイン色紙が飾られてあるのを横目に見ていると、「この中から探してください」と部屋を一室指差されてしまった

……探してくださいって

持ってきてくれないわけ?

戸惑っていると「今日は郵便物がたくさんあって、全てこの部屋に入れているとどこかに紛れ込んでしまって」と言われて、アタシは代理で受け取ってもらった以上あんまりわがままも言えずに、やむなく靴を脱いであがらせてもらった

「お邪魔します」

とおずおずと入っていき、指差されたドアの内側を見て面食らった

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