☆ハイローハート
* * * * *

それからは女医が来たり看護婦さんが来て脈をはかったり熱をはかったり、理一のことを聞きたくても聞く間もなく体を調べられて、意識や記憶がはっきりしているか質問されて……

やっとこっちから何かを聞こうとすると「失礼します」と白いトレイに乗った質素な食事が運ばれてきた

……病院食を絵に描いたような……

あんまり食事するっていう気分でもないねんけど……

看護婦さんが出たり入ったりする中でいつのまにちづるさんはフルメイクを完成させたんだろう

「みさきちゃん、食欲ある??
もし口当たりのいいものとか食べたかったら、何か買ってくるよ?」

と話しかけられたときは、リアルに目からうろこが落ちた


……めっちゃ、美人やんこの人……

長いまつ毛はカールしすぎることなく前方に揃って伸びていて、整えられた眉毛は彼女に知性と優しさをプラスしている

さっきまでは嫌味に思えたネイルアートも一気にバランスがとれて、それはちづるさんの手の動きを上品に見せるアイテムの一つのようにすら思えた

まあ、病院のコンセント使ってコテを使用していることはさておき……


「あんまりお腹すいてないし、このヨーグルトがあるから大丈夫です」

とトレイの上の小さなプレーンヨーグルトを指差した


「そお?じゃあ明日くるときにはプリンとかゼリーとか買ってくるね、好き?」


もともとキレイなストレートなのに、彼女の髪は更にストレートになってその間からチラリと見える肩がキレイ


「っとじゃあ、コーヒーゼリーを」

「オッケー、わかった
ママ、アタシ車を病院の正面まで持ってくるね」

「え?もうそんな時間??」


看護婦さんに検査の内容やその結果次第での退院の流れをきいていた母親が驚いて時計を確認した


「ママ、着付けの時間に間に合うでしょ?」

「大丈夫大丈夫、ちづるは同伴?」

「同伴じゃないけど、ユッキーとごはん食べてから行く」

「そう、じゃあ車よろしく」

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