☆ハイローハート
感傷的になっている

薬品の匂いだけで麻薬中毒になったみたい

過去の思い出が不意にやってきたり、壁が迫ってきたり、なのに理一との思い出がそれを押し返す

ママの声がアタシを導く

ママは、西田家の太陽なんです


「理一は、きっと……大丈夫」


そう言った彼女はアタシを見て気丈に笑顔を見せる


「みさきちゃんが目覚めたって聞いたら、慌てて自分も目を覚ますよ」

「あれからずっと??」

「救急車が来る前から意識なかったんでしょ?それからずっと」

「怪我は……??」

「腕と背中を縫ったけれど、そんなに深い傷でもないの
カッターナイフだからね」


水面に顔を出せずにおぼれているみたいな苦しさ、両手を重ねて手のひらの体温で胸をあたためながらたくさん空気を吸い込むと、落ち着かせるように倍の時間をかけて吐き出した


「理一に会える?」

「うん、ついさっき集中治療室から普通の病室に移動したばっかりよ
その時に看護婦さんがこの部屋に出入りするのが見えて、もしかしてみさきちゃんの意識が戻ったのかな?って思ったの」

「理一のとこ行きたい」

「みさきちゃんも目が覚めたばっかりなんだから、明日にしない?」

「しない
だって、アタシが目覚めたら、理一も一緒に目覚めるんでしょ??」

「……だね」


立ち上がろうとするアタシの手を取って支えてくれたママの手をしっかりと握った


ギュッと握り返してくれる手


口には出さなくても、ママの不安な気持ちがそこから伝わってくる

だからきっと、アタシの不安や悲しみも全部ママに伝わってるんだ


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