☆ハイローハート
北口さんは「じゃあ番号がわかったらすぐに連絡してね」と他の書類を探り出した

ペンを返すタイミングを失っていると

「昨日お母さまが試算した金額以上のお金を置いていかれたのね
それでそのお金が余ったから、お会計ではそれ受け取って帰って
受領印の代わりにサインでいいって言ってたし」


……なるほど、そんな技があったんや


「そうそう、これが処方箋
元気になる健康系のお薬やからおススメ
ちゃんと薬局行って受け取って飲んでね」

「健康系の薬って何??」

「鉄剤と、ビタミンC
ビタミンCはお肌にいいからね
それと体のバランスを整える漢方」

……漢方

にっが~いやつ

「なんかモロさ、人間ドッグにでも来たみたいじゃない??」

「ほんまに、健康系の薬もらえるなんてびっくりや」

処方箋を受け取ってボー然としていると北口さんは

「じゃ、ケータイの番号よろしく
どうせ西田くんの面会時間に会えるよね?
じゃ、気をつけて!」

とお別れの挨拶もそこそこにサッサと出て行ってしまった

「看護婦が“どうせ会えるよね!”っていう挨拶もどうなんだろうね」

とあこは首をひねりながら笑って荷物を持った

アタシも来た時が来た時だけに大した荷物はない


特に感慨深い思いも無く自分の病室をあとにすると、迷いもなく理一の病室に寄るあこに続く

理一の枕元で花を生けかえていたママが振り返った

「みさきちゃん、今日退院なんでしょ?」

「そう……ほんまは理一と一緒に退院したいのに」

「夕飯、ごちそう作るからうちにおいでね」

「うん……でも、あんまり食欲ないからごちそうじゃなくていいよ
たまご焼きがいいな」


理一の目が開かないのに、ごちそうなんて気分にもならないし

< 678 / 756 >

この作品をシェア

pagetop