☆ハイローハート
アタシだけ異空間に迷い込んだみたい
目に映る全てはこんなにもうそ臭く、意味を成さなかった???


「大丈夫??」


若い刑事と隣人の姿がかぶって、指先から荷物が滑り落ちた


慌てて拾って、「大丈夫です」と相手と距離を取りながら鍵を取り出し、逃げるように室内へ入っていく


平気
自分の感情をコントロールできなくなるほどやわじゃない
冷静を装っていれば、いつか本当に冷静になる

彼らの質問にただ真実を答えるだけ

まるで自分に起こった出来事ではないかのように

いつかテレビドラマで見たシーンの話をするかのように

視線をおとしたダイニングテーブルがスクリーンになって映し出される

ただその状況を伝えるだけ……



だけどものすごく、鮮明


アタシをかばった理一の腕から落ちた血の色

ガラスが割れるような音

聞こえるサイレン

全部が強烈に実感をわかせる


心が砕かれてしまわないように現実逃避せよ



「新しい携帯電話かな、それ」


ふと話が切り替わって、そらしていた目をあげると刑事さん二人は立っていた


アタシは自分だけダイニングのイスに座り、彼らに座ることを勧めなかったんだ……

思わず立ち上がって「ごめんなさい……良かったら、座ってください」と声をかけた


「ありがとう、もしそれが諸岡さんの新しい携帯電話なら、番号を教えてもらえる??
彼がいまだに意識不明で気が休まらないのはよくわかるんだけど、また警察署に来てもらうことになるし」

アタシはまだ自分の番号を覚えていないので、ケータイを持ち上げた

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