☆ハイローハート
病院の廊下はところどころ電気が消えていたりして、電灯に導かれながら歩いた


「絶対大丈夫だよね
だってアイツの執念深さが半端ないこと……モロへの態度でわかったもん」

「うん……」

「モロと付き合えるまで、絶対死ねないって思ってそう」


あんまり聞こえてなかった

耳から流れ込んではくるんだけど、意味を消化するまえに他の感情に押し流されて消えてしまう


病室から出ているように言われたのか、理一ママと龍一が廊下に立っている

「あこちゃん、みさきちゃん……」

こっちに気付いたママは、自分の腕で自分を抱くようにしながら眉を下げた

「理一は?」とあこが心配そうにママの背中を撫でている

「刃物がカッターナイフだったでしょ?
背中の方が感染症を起こしたみたいで……、傷口が腫れて高熱が出てるの」

「今は何してるの??」

「注射とかしてるみたいだけど、様子によってはもう一回切開するかもしれないんだって」


あことママの会話をじっと聞いている内に直線なはずの廊下が曲線に見えて、目がまわっているのがわかった

1、2歩動いて体勢を立て直す


「みさき……大丈夫なのかよ?
今日退院したばっかりなのにそんなに出歩いて」

龍一に聞かれて、アタシはただうなずいただけ

彼だってきっと不安だろうにそんな表情は一切見せずにアタシの心配をしてくれている……

年下なのにすごくしっかりしてて、少しその気丈さを分けて欲しいくらい

「向こうにベンチあるから座ってろよ
何かあったら呼びに行くから」

と言ってくれた龍一の腰に腕をまわしてぎゅっと抱きしめた


「うわ」


と一歩下がって驚く龍一に「理一の近くにいたいから、ここで一緒にいる……」と伝えると、抱きしめているのかだきしめてもらっているのか……ゆっくり背中に添えられた手がトントンと優しくアタシをなだめていたわった


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